アシックス(ASICS)を深掘る|インバウンドで沸騰する日本発スポーツブランドの強みと未来

目次

アシックスとは

アシックス(ASICS)は、日本を代表するスポーツブランドの一つ。1949年、神戸で鬼塚喜八郎によって設立された「鬼塚株式会社」がその原点であり、1977年に「アシックス」として社名を改めた。社名の由来はラテン語の格言「Anima Sana In Corpore Sano(健全な身体に健全な精神を)」であり、この哲学は現在に至るまでブランドの根底を支えている。

事業内容はランニングシューズを中心としたスポーツ用品全般にわたり、パフォーマンス系ランニングが売上の50%を占める。また、ライフスタイルラインである「オニツカタイガー」や「SportStyle」も急成長しており、海外の若年層を中心に人気が高まっている

2023年時点の地域別売上を見ると、日本16%、北米21%、欧州27%、中国14%、その他21%と、グローバルでの存在感は非常に大きい。とくに欧州と北米での売上比率が高く、世界的に見てもグローバルブランドとして確固たる立ち位置を築いている。


アシックスの特徴や強み

アシックスの最大の強みは「技術力」と「品質」だ。ランニングシューズの分野では、独自のテクノロジーを数多く開発してきた。代表的なものには、衝撃吸収に優れた「GELクッション」、軽量かつ反発性を持つ「FlyteFoam」、かかとの安定性を高める「Heel Clutching System」などがある。これらの技術はトップアスリートから一般ランナーまで幅広く支持されている。

さらに、神戸を拠点としたスポーツ工学研究所を持ち、データ分析や生体力学に基づいたシューズ開発を行っている点も特筆すべきだ。単にマーケティングやデザインに頼るのではなく、科学的アプローチによって性能を裏打ちしている。この「信頼性の高さ」が、競合ブランドとの差別化を生み出している。


海外やインバウンドでの人気ぶり

近年、アシックスは海外市場で驚異的な成長を遂げている。2025年第一四半期にはSportStyle部門の売上が前年同期比49.6%増の351億円に達し、オニツカタイガーも57.2%増の283億円を記録した。欧州や北米に加え、中国市場でも売上が倍増しており、グローバルに需要が拡大している。

特に若年層のファッションシーンにおいては、レトロなランニングシューズが再評価されており、2000年代の美学を取り入れた「Gel-Kayano 14」「Gel-NYC」といったモデルが注目を集めている。また、海外のセレブリティやインフルエンサーが着用することにより、アシックスは単なるスポーツブランドを超えて「カルチャー的アイコン」として認知されつつある。

また、日本国内においても、アシックスはインバウンド需要の追い風を強く受けている。特に「オニツカタイガー」は観光客に絶大な人気を誇り、2025年第一四半期にはインバウンド売上が前年の2倍に伸びた。日本国内の直営店では、中国や東南アジアからの旅行客が行列を作る光景も珍しくない。

インバウンド人気の背景には、日本ブランドとしての信頼感、円安による価格メリット、そして「日本でしか買えない限定商品」の存在がある。とくにオニツカタイガーは、日本文化やレトロ感を打ち出したデザインで、海外観光客にとって“お土産以上の価値”を持つ存在になっている。

主要モデルの系譜と特徴

ブランドを語る上で欠かせないのが、長年進化を続けてきたフラッグシップモデルの存在だ。それぞれのシリーズは明確な個性を持ち、ランナーの目的やスタイルに応じて選ばれている。

GEL KAYANO

1993年に初代が発売されたGel-Kayanoは、アシックスを代表する高機能ランニングシューズだ。安定性とクッション性のバランスが特徴で、長距離ランナーから絶大な信頼を得ている。最新のKayano 30では「4D GUIDANCE SYSTEM」を搭載し、過回内(オーバープロネーション)を防ぎながら自然な足運びを可能にしている。
また、ファッションシーンでも2000年代後半のデザインを復刻した「Gel-Kayano 14」が人気を集めており、ストリートカルチャーに強く浸透している。

GEL NIMBUS

Gel-Nimbusは「クッション性の王様」と称されるモデルだ。1999年の初代から続くシリーズで、柔らかく快適なライド感を重視するランナーに選ばれてきた。長距離トレーニングやジョギング向けに設計されており、最新作Nimbus 26では環境負荷を抑えた素材を導入するなど、サステナビリティにも取り組んでいる。

GEL CUMULUS

CumulusはNimbusよりも軽量で、日常的なトレーニングに適した万能型モデルだ。名前の由来は「積雲」であり、その名の通り軽やかな履き心地が魅力。価格帯もKayanoやNimbusに比べて手頃で、アシックスのランニングシューズ入門として人気を集めている。

MetaSpeed

2021年に登場したMetaSpeed SkyとMetaSpeed Edgeは、カーボンプレート搭載の厚底ランニングシューズとして、マラソンのトップレベルで戦うために開発された。ナイキのヴェイパーフライ、アディダスのアディオス プロと並び称される“厚底三強”の一角であり、アシックスが最新ランニング市場においても存在感を示していることを物語る。

GEL-LYTE III(ゲルライト3)

1990年に登場し、スプリットタン(真ん中で分かれたベロ)を搭載した名作。軽量性とクッション性を両立し、ストリートシーンでカルト的人気を獲得。スニーカーヘッズの定番であり、海外のコラボ企画(KITH、atmosなど)を通じて世界的評価を高めている。

GEL-QUANTUM 360

360度GELクッションを搭載したハイテクモデル。近未来的なデザインと履き心地の良さから、アジア・欧米ともにストリートで支持を得ている。アシックスの「テック系ファッション」を象徴するモデル。

GEL-NYC(ゲル・ニューヨーク)

2023年にリリースされた比較的新しいモデル。GEL-CUMULUS 16のアッパーをベースに、GEL-NIMBUS 3とGEL-MC PLUS Vの要素をミックス。レトロな要素とハイテク感を絶妙に融合させた「ネオ・クラシック」な一足。ニューヨークの名を冠したこともあり、海外マーケットでの販売が好調。スニーカーショップのリストックも即完売が続いており、アシックスの「現在進行形の顔」となっている。

Mexico 66(Onitsuka Tiger)

1966年に誕生したモデルで、1968年メキシコ五輪の日本代表選手が着用したことから名付けられた。特徴的なクロスライン(アシックスストライプ)が初めて採用された歴史的モデルで、現在はシティユースの定番として定着している。特に白×赤やイエロー×ブラックなどのカラーはアイコン的存在。

GSM(Onitsuka Tiger)

1980年代のテニスシューズをベースにしたコート系スニーカー。クラシックでシンプルなフォルムが特徴で、日常のスタイリングに溶け込みやすい。ヨーロッパ市場やアジア圏の都市型ファッションで高い人気を誇る。

California 78(Onitsuka Tiger)

1978年に発表されたランニングシューズを復刻。レトロなデザインと細身のシルエットが特徴で、ヴィンテージブームとも相性が良い。ミッドソールの形状など、70年代の空気感をまとっており、ノスタルジックな価値を提供する。

DELEGATION EX(Onitsuka Tiger)

東京オリンピック(1964年)の日本代表モデルを現代風にリメイクした一足。Chunkyソールを搭載し、クラシックとモダンを融合させている。観光客からの人気が高く、アジア圏の若年層を中心に購入されるケースが多い。



限定モデルとコラボレーション

アシックスの人気を支えるもう一つの要因が、ファッションとの融合だ。近年はKiko Kostadinov、Ronnie Fieg、JJJJound、Awake NY、Vivienne Westwoodなど、世界的なデザイナーやブランドとのコラボレーションを積極的に展開している。

特にGel-NYCはAwake NYとのコラボで誕生し、その後一般販売へと拡大した成功例として知られる。また、Gel-Kayano 14の復刻モデルやJJJJoundとの限定コラボも、ストリートカルチャー層に強い影響を与えている。こうした限定モデルは、スニーカーヘッズやファッション感度の高い層を取り込む戦略として大きな成果を上げている。

人気の要因の解明

アシックスの人気の背景には、以下の要因が複合的に作用している。

  1. 技術力と品質への信頼
    科学的根拠に基づいたシューズ開発により、長年にわたり「怪我をしにくいシューズ」として認知されてきた。
  2. 限定モデル・コラボによるファッション市場の開拓
    ストリートカルチャーとの親和性を高め、スポーツを超えて若年層に浸透。
  3. インバウンド需要の拡大
    円安と「日本発ブランド」の魅力が相まって、観光客に強い訴求力を持つ。
  4. レトロランニングブームとの合致
    2000年代回帰のファッション潮流とシンクロし、海外で再評価が進んでいる。
  5. 経営戦略と外部環境
    為替の円安効果が利益を押し上げ、投資余力を生み出している。

こうした要素が重なり合い、アシックスは今、過去最大規模の成長局面を迎えているといえる。


スポーツ選手とブランド

アシックスは「ランニングシューズブランド」というイメージが強いが、スポーツ全般においても存在感を示している。陸上競技やマラソンでは多くのトップランナーに支持され、オリンピック日本代表や世界陸上など国際大会での供給実績も豊富だ。

契約選手も幅広く、テニスのノバク・ジョコビッチやイガ・シフィオンテク、サッカーの冨安健洋、バレーボールの髙橋藍らが名を連ねる。世界のトップアスリートが信頼を寄せることは、ブランドの性能面での信頼性を裏付ける証拠といえる。

テニス:ノバク・ジョコビッチとイガ・シフィオンテク

アシックスを語る上で象徴的な存在が、テニス界のレジェンドであるノバク・ジョコビッチだ。彼はアシックスのテニスシューズ「Court FF Novak」を着用し、数々のグランドスラムタイトルを獲得している。世界ランキング1位の選手がアシックスを選んでいる事実は、テニス界における信頼性を裏付けている。
また、女子テニスで急成長を遂げたイガ・シフィオンテクもアシックスと契約。若い世代のファンを取り込み、ブランドのイメージ刷新にも大きく貢献している。

サッカー:冨安健洋

アーセナルで活躍する冨安健洋もアシックスの契約選手だ。欧州のトップクラブでプレーする日本人選手がアシックスを選ぶことは、ブランドの国際的な信頼性を高めると同時に、国内外のファンにとって大きな誇りとなっている。

マラソン・陸上競技

アシックスは長年、日本のマラソン代表や陸上競技のトップ選手にシューズを提供してきた。世界記録保持者クラスの選手に比べて派手さはないが、着実に「信頼できるパートナー」として選手に寄り添っている。この姿勢がブランドの誠実なイメージを補強している。

バレーボール

国内外のバレーボール選手からも厚い支持を受けている。特に日本代表の髙橋藍が着用することで、若いファン層への訴求力を強めている。

契約選手たちは単なる広告塔ではなく、実際にアシックスのシューズ性能を競技現場で証明する存在だ。その成果が、ブランドの信頼をさらに厚くしている。

競合とのマーケティング戦略比較

アシックス、ナイキ、アディダスの三大ブランドを比べると、そのアプローチの違いが鮮明に浮かび上がる。

ナイキ:カリスマ的マーケティング

ナイキは「マーケティングの帝王」とも呼ばれるほど、圧倒的なブランディング戦略を展開している。マイケル・ジョーダンとの「エアジョーダン」シリーズを皮切りに、レブロン・ジェームズやクリスティアーノ・ロナウドなどスーパースターとの契約を重ね、スポーツを超えてカルチャーを牽引してきた。SNSキャンペーンや映像広告も革新的で、若者の心を掴む巧みさは群を抜いている。

アディダス:ストリートとスポーツの融合

アディダスはスポーツとストリートカルチャーを橋渡しするポジションを築いてきた。YEEZYシリーズやファレル・ウィリアムスとのコラボはその象徴であり、スニーカーが音楽やファッションと不可分な存在であることを示した。また、サッカーW杯やオリンピックといった大型イベントのスポンサーシップにも積極的で、グローバルな露出戦略に長けている。

アシックス:信頼と誠実のブランド戦略

これに対し、アシックスはマーケティングの華やかさではやや控えめだ。しかし、技術力に裏打ちされた製品を軸に「誠実さ」や「安心感」を前面に打ち出す戦略を貫いている。近年は限定コラボを通じてファッション領域にも踏み込んでいるが、ベースにあるのは常に「健全な身体に健全な精神を」という理念だ。競合が大量契約や華やかな広告で勝負する中、アシックスは“信頼で選ばれるブランド”という差別化に成功している。


まとめ

アシックスは「技術」「信頼性」「誠実さ」を軸に、ランニングシューズから世界を制してきたブランドだ。現在はファッション市場にも拡大し、インバウンド需要を追い風に売上は右肩上がりを続けている。

ナイキやアディダスのような巨大ブランドと比べると規模では劣るものの、アシックスが持つ“本質的な強み”は揺るがない。その強みを生かし、スポーツとファッションの両市場で存在感を高めていくことは間違いない。

「健全な身体に健全な精神を」という創業の理念は、いまや世界中のランナーやファッション愛好者に共有されつつある。アシックスの未来は、スポーツブランドの枠を超えた“カルチャーの担い手”として、さらに広がっていくだろう。

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