ロンドンといえば、サッカーと音楽。この2つは、まるで都市の心臓と鼓動のように、人々の生活や感情と密接につながっている。そんなロンドンを象徴する存在同士、プレミアリーグの名門クラブ「Chelsea FC(チェルシーFC)」と、世界的ラッパーとして急成長を遂げている「Central Cee(セントラル・シー)」が2024年から、新たな形で手を結んでいる。
本記事では、両者の関係や直近の活動について、深く掘り下げていく。
チェルシーFCとは?ブルーズと呼ばれるロンドンの名門
チェルシー FCは、1905年に創設されたイングランド・ロンドン西部のフラムに本拠地を置くサッカークラブだ。ホームスタジアムである「スタンフォード・ブリッジ」は、イングランドでも歴史あるスタジアムの一つとして知られる。
2003年にロシアのオリガルヒ、ロマン・アブラモビッチによって買収されて以降、チェルシーは資金力と実力を兼ね備えた世界のビッグクラブへと成長。プレミアリーグ、FAカップ、チャンピオンズリーグなど数々のタイトルを獲得してきた。
チェルシーは勝利の象徴として、またロンドンのアイデンティティの一部として、世界中にファンを持つ存在となっている。
セントラル・シーとは?UKドリルのカリスマ
セントラル・シー(Central Cee)は、1998年生まれのロンドン出身ラッパー。本名はオークリー・セザール・スー(Oakley Caesar-Su)。イギリスのサウス・ロンドンとは一線を画す、ウェスト・ロンドンのシーンから登場し、UKドリル、トラップ、グライムを巧みにミックスしたサウンドで一気にブレイクした。
彼の代表曲「Doja」や「Let go」はTikTokでもバイラルとなり、YouTubeの再生数は億単位。UKラップというジャンルを超え、世界のヒップホップシーンに確固たる存在感を示している。
ただのラッパーではなく、ファッション、ストリートカルチャーの発信者としても知られており、NikeやTrapstarといったブランドとのコラボ経験もある。
両者の関係、ウエスト・ロンドンという共通項
チェルシーとセントラル・シーが繋がった最大の理由は、「地元」にある。両者ともに、ロンドンのウエスト(西)に根を張っている存在だ。
- チェルシー:ロンドン西部、キングス・ロード近郊に本拠地スタンフォード・ブリッジを構える。
- セントラル・シー:シェパーズ・ブッシュという西ロンドンの地区出身。彼のリリックにはしばしば「W12(郵便番号)」「Bush」などのローカルなキーワードが登場。
つまり、両者の関係性は、マーケティング的なコラボというよりも、同じ空気を吸って育った者同士の自然な結びつきともいえる。彼らはともに、ロンドン西部のストリートと誇りを背負い、世界へと発信している。

「OUR HOUSE」──ただの広告ではない、現代ロンドンのストーリー
2025年、チェルシーはセントラル・シーをフィーチャーしたキャンペーン「OUR HOUSE」を発表。このキャンペーンは単なる広告ではなく、クラブのリブランディング、新たな世代へのアプローチを象徴するものとなった。
映像の特徴
「OUR HOUSE」のビデオでは、セントラル・シーがナレーションを務め、地元・ウエストロンドンのストリート、スタンフォード・ブリッジ、チェルシーのユニフォームなどが印象的に映し出される。
彼の語り口は詩的でありながらリアルで、まるでドキュメンタリーのような説得力がある。テーマは「居場所」「プライド」「アイデンティティ」。チェルシーという家が、ただのクラブではなく、多くの人にとっての精神的なホームであることが強調されている。
なぜこのコラボが注目されたか
- 若年層への訴求:UKラップを聴く10〜20代に対し、クラブのイメージを刷新。
- グローバルな波及:セントラル・シーの国際的影響力が、チェルシーのブランドをさらに海外へ拡張。
- カルチャーの融合:スポーツ×音楽×ファッションの三位一体。現代的な“カルチャークラブ”のあり方を体現。
まさに、これからのサッカークラブが進むべき未来像を示しているプロジェクトだといえる。
チェルシーFC × セントラル・シー × OVO
2025年7月、チェルシーFCとセントラル・シーは、カナダのスーパースター、Drakeが主宰するライフスタイルブランド「OVO(October’s Very Own)」を巻き込んだトリプルコラボレーションを発表。サッカー界のみならず、世界中のストリートカルチャー愛好者の間で大きな話題となった。
このコラボレーションは、単なるグッズ展開にとどまらず、クラブと地域、音楽とファッション、ファンとプレイヤーを横断するカルチャームーブメントとして展開された。注目されたのは、OVOとチェルシーFCが共同で制作したスペシャルユニフォーム。クラブの伝統的なブルーを基調に、胸元や袖にOVOの象徴であるフクロウのロゴがさりげなくあしらわれたそのデザインは、まさに“ロンドンとトロントの融合”を体現していた。
地元ロンドンのカルチャーと世界的な音楽トレンドを同時に体現するセントラルシーは、まさにこのプロジェクトのキーパーソンだとも言える。LOOKBOOKやプロモーション映像では、セントラル・シーがOVO × チェルシーのジャケットを身にまとい、スタンフォード・ブリッジやロンドンの街角をバックに登場。自身のスタイルを貫きながら、クラブの歴史やストリートのリアリティを言葉や表情で語るその姿は、単なるモデル以上の説得力を持っていた。
また、このプロジェクトはチェルシーFCが掲げる「カルチャークラブ」への転換を象徴する一歩でもある。近年、トッド・ボーリー体制下でのブランディング再構築が進む中、クラブは世界的な若者カルチャーとの接続を加速させている。音楽とファッションを起点に、ファンとクラブの関係性をよりパーソナルなものへと変えていく。

セントラル・シーの立ち位置、“アンバサダー”としての役割
セントラル・シーは、単に出演者ではなく、カルチャーアンバサダーのような存在としてこのプロジェクトに関わっている。

- 自らのSNSでも積極的に拡散
- 若者にとって“クラブへの興味の入口”として機能
- チェルシーのグッズを自然体で着用するスタイルが人気に
NikeやTrapstarのコラボと同様に、「服やクラブを“生き様”として着る」彼の姿勢が、共感と模倣を生み、ストリートとスタジアムの距離を縮めている。

まとめ
チェルシーとセントラル・シーのコラボは、単なるプロモーションを超えた文化的な現象と言える。クラブとラッパー、フットボールと音楽、スタジアムとストリート。ロンドンという街のリアルな息吹を体現する両者の今後の動きにも、引き続き注目したい。

