ヒップホップアーティストの中でも、唯一無二の存在感を放ち続けるトラヴィス・スコット(Travis Scott)。彼の手がける音楽がカルチャーの最前線にあることは周知の事実だが、今や彼の存在は音楽の枠にとどまらず、ファッション、スニーカー、そしてスポーツの世界にまで浸透している。
特に彼が築いてきた「ナイキとの関係性」、そして地元ヒューストンへの愛着から生まれた「MLBやNBAとのコラボレーション」は、音楽とスポーツカルチャーの新たな結節点として注目を集めている。
この記事では、「トラヴィス ナイキ スニーカー」というキーワードを軸に、彼の生み出すカルチャーがどのようにしてナイキ、MLB、NBAと結びつき、カルチャーに影響を与えているのかを掘り下げていく。
トラヴィスとナイキ:ブランドを超えた関係
トラヴィス・スコットとナイキの関係は、単なるアーティストとブランドのタイアップでは語り尽くせない。
2017年、Air Force 1 “AF100”で始まったコラボレーションは、以降、Air Jordan 1やDunk Low、Air Max 270 React ENG、そしてリバーススウッシュのAJ1 Lowなど、数々の名作を生み出してきた。これらのスニーカーはいずれも即完売、リセール市場でも高値で取引され、ブランド価値そのものを押し上げる存在となった。

ナイキは、これまでにもアーティストとのコラボを多数展開してきたが、トラヴィスとのプロジェクトが異彩を放つのは、彼自身が音楽とファッション、そしてスポーツの文脈すべてを横断している点にある。スニーカーは単なるプロダクトではなく、カルチャーそのものとして機能しており、トラヴィスが履けばNBA選手が真似し、ファンはそれを真似る。彼のスニーカーがリリースされるたび、SNSはもちろん、StockXやGOATの価格も一気に高騰する。スニーカーヘッズやNBA選手たちの間でも支持を集め、コート外でも「パフォーマンスとしてのファッション」が機能するようになっていった。

2024~2025年にかけては、Jordan Jumpman Jack “Dark Mocha”やZoom Field Jaxx “Light Chocolate”、“Bright Cactus”、Fragmentとの新作も控えており、勢いは止まらない。




MLBとNBAへのオマージュ:ヒューストンが結ぶ縁
トラヴィスは、出身地であるヒューストンに対する深い愛着を作品の中でも常に表現してきた。2023年5月、トラヴィス・スコットはロサンゼルス・カブスとの試合前にヒューストン・アストロズのスプリングトレーニング(バッティングプラクティス)に参加し、自ら重りを持って練習にも励んだ。そこでチームから「Cactus Jack(Jack)」と名入れされた公式サイン入りアストロズのジャージをプレゼントされた。本人の愛称である「Cactus Jack」が背面に入っており、プロスポーツチームとの間に深いリスペクトとローカルな絆があることを示す象徴的な出来事だった。

そしてNBAとの関係も深い。レブロン・ジェームズやケビン・デュラントらトップスターとの交流が多く、ゲーム観戦やプライベートでも親交がある。特にレブロン・ジェームズとは、「The Shop」ポッドキャストで、お互いを「アリーナのエネルギーを共有する存在」と語り合っている。コートサイドでの“トラヴィスのファッションスタイル”は常に話題となり、彼が着るジャケットやスニーカーが即トレンドになる現象はすでに定番化している。


また、地元チームであるヒューストン・ロケッツのゲームにも頻繁に足を運び、イベントやMVにもバスケカルチャーを散りばめてきた。トラヴィスの楽曲「FRANCHISE」のMVでは、マイケル・ジョーダン所有の豪邸で撮影を敢行。Jordan Brandとの距離感が極めて近いことを象徴する演出だ。
また、トラヴィスは自身の着用シーンでもファンを魅了し続けている。2019年にはロケッツの試合席で、EvisuデニムとNike SB Dunk、Richard Milleウォッチというスタイルで登場し、音楽とスポーツ、ストリートファッションを自在にミックスした“トラヴィス スポーツ”なコーディネートで注目を集めた。

さらに、2024年のNBAファイナルでは、ボストン・セルティックスカラーの未発表Air Jordan Jumpman Jackを着用し、会場で異彩を放った。

Cactus Jack All Leagues:すべてのリーグをひとつに
2025年、トラヴィス・スコットは再びスポーツとカルチャーの接点に新たな一石を投じる。彼のクリエイティブレーベルCactus Jack(カクタスジャックによる新たなプロジェクト、その名も「Cactus Jack All Leagues」がついに正式発表された。

この「All Leagues」コレクションは、NBA(バスケットボール)、MLB(野球)、NHL(アイスホッケー)、そしてNFL(アメリカンフットボール)といったアメリカ4大プロスポーツリーグを横断的にリスペクトする内容で構成される。ヴィジュアルは、各リーグのユニフォームを彷彿とさせるカラーパターン、背番号、グラフィックを随所に採用しており、ストリートとスタジアムの境界を曖昧にするトラヴィスならではの美学が貫かれている。
また、過去にトラヴィスが親交のあるNBAスターたち、たとえばデビン・ブッカー(Phoenix Suns)やPJ・タッカー(Houston Rockets〜複数球団)らがこのコレクションのテスト着用をしている姿も一部のリークアカウントで確認されており、その“バスケ×ヒップホップ”の連携ぶりは見逃せない。
ナイキとの協業で注目されるのはやはりフットウェアだが、今回はそれだけにとどまらない。「Cactus Jack All Leagues」では、Tシャツや、NBAスタイルのウィームジャージ、レトロなベースボールキャップ、NFL風パッチ付きジャケット、NHLスタイルのアイスホッケーシャツなども展開予定。この広がりは、まさに“アメリカのスポーツカルチャー”全体を取り込み、ストリートへと変換する試みだ。

このプロジェクトは単なるファッションアイテムのリリースにとどまらず、トラヴィス・スコットがスポーツに抱く想いと、カルチャーとしてのスポーツの役割を可視化する試みでもある。

日本における人気:なぜこれほど刺さるのか?
日本国内でもトラヴィス人気は高く、スニーカーリリース日には数万の抽選応募が殺到。SNSでは関連情報がトレンドに上がり、特にAJ1シリーズはファッション誌でも度々特集されてきた。
また、音楽ファンのみならず、NBA好きの層からも支持を得ている理由は、彼の「バスケ好き」がストレートに伝わってくる点にある。単なるマーケティングではなく、彼自身が本気でスポーツを愛していることが、無意識に伝わってくるのだ。
また、トラヴィスの展開するコレクションは、そのほとんどがゲリラ的で、事前情報は最小限。これは「情報過多時代」における、いわば逆張りのマーケティングだ。ナイキとのコラボモデルでは、SNKRSでのゲリラドロップや、限定ショップでのシークレットローンチが話題となり、ファンの間では「どう入手するか」が一種のゲームとなっている。このプレステージ戦略は、“ストーリーと希少性”を生み出すために不可欠であり、トラヴィスのブランディングにおける核の一つでもある。
NBAプレイヤーの着用シーン:カルチャーの橋渡し
NBAプレイヤーの間でも、トラヴィスモデルのスニーカーは「ロッカールームの定番」となっている。特に、ジェイソン・テイタムやPJ・タッカーといったスニーカーフリークの選手たちが、試合前にトラヴィスのAJ1やAJ6を着用している姿は、ファッションメディアやSNSで多く取り上げられている。NBAの“トンネルファッション”の中で、トラヴィスの存在感はひときわ強い。

また、ときにはゲームシューズとしてではなく、トンマナを揃えたコーディネートとして着用され、「コート外のスタイル」にも影響を与えている。ナイキにとっても、プレイヤーたちが自然に支持している点は、PR戦略以上に価値ある現象となっている。

今後への示唆と展望:スポーツ界の新たなキュレーターへ
今後、トラヴィス・スコットがスポーツ界にもたらすインパクトはさらに拡大していくだろう。彼が手がける次のコレクションでは、バスケットボールライン専用のシグネチャーモデルが発表されるという噂もあり、ナイキとしても「ライフスタイルとパフォーマンスの融合」を推進する好例となるはずだ。

